令和4年度「大切な命を守る」全国中学・高校生作文コンクールには、全国から総数15,806作品(中学生の部:7,660作品、高校生の部:8,146作品)の応募がありました。
そのうち、徳島県立川島高等学校6年生の瀧本 安樹さんの作品が、「警察庁犯罪被害者支援室長賞」を受賞されましたので、紹介します。
「人権を慮るコミュニティづくりを」
徳島県立川島高等学校 6年
瀧本 安樹
今回の人権講演会には、「子どもたちを被害者にも加害者にもしないために」という題目で、大阪から一井彩子先生が来てくださいました。一井先生は息子さんの勝さんを亡くすことになってしまった傷害事件について話してくださいました。
当時まだ15歳、今の私より2つ下の歳にして、上級生と知人によるひどい暴力を受け、傷害致死となってしまったというお話に非常に大きなショックを与えられました。主犯や他3人の少年は何を思ってそんな事件を起こしたのか。また、想像できないほどの痛みを受けた勝さんのことを思うと、理不尽な暴力に対する怒りがこみ上げてきました。そしてどうしようもなく、「許せない。」と強く思いました。
同時に、少年事件の被害者とその家族に対する法律や制度があまりにも整えられておらず、その配慮のなさにも驚きました。自分の息子が「お酒を飲まない。」という正しい判断をしたために、とんでもない暴力を振るわれ、亡くなってしまうということは、今の私が想像できる悲しみや憤りよりも苦しいことのはずです。それなのに、事件の真相や「加害者が今どうしているのか」を知る手段がないというのは、きっと日々、神経をすり減らしながら生活しなければならないということだったと思います。「私が事件のことを受け入れなければいけないと思った。」という一井先生の言葉に強い覚悟を感じました。
ちょうど今年の5月に少年法が改正され、令和4年4月1日から施行されることになりました。改正された少年法では、限りなく大人に近い18歳19歳が特定少年として扱われ、17歳以下の少年とは区別して取り扱われます。少年審判でなく、一般的な刑事裁判として公開の法廷で手続きが進められるので、被害者は加害者の情報をこれまでよりも知ることができるし、重大事件の刑罰も重くなったと聞きました。
このように少年法が改正されることになったのも、一井先生のように少年による犯罪で悲しい思いをした人々がたくさんいたからだと想像できます。そう考えると、被害者に配慮したものだとしても、少年法が厳しくなったということは、多くの人が少年犯罪で苦しんでいるという事実を表しているのです。複雑な気持ちになりました。
今日の講演で、「人の命の大切さ」そして「暴力は絶対にいけない」ということを学びました。傷害事件に遭った息子さん、そして娘さんの話をするのは、母親である一井先生にとっては悲しいことであり、それゆえ、聞く私たちが加害者や被害者になることがないようにという強い願いがその言葉の一つ一つから伝わってきました。その願いに報いるためにも、人の痛みがわかり、相手を思いやれる人間性を身につけていきたいです。
また、私自身がこの講演で学んだ「命の大切さ」というものについて家族や友人と共有し、できるだけ多くの人と共有していきます。そしてこの「命の大切さ」を思う輪をどんどん広げていきたいです。そして、周囲の人々がお互いに人権を慮ることのできるコミュニティづくりをしていける人になろうと思います。